「戒名要らない」の落とし穴

kaimyo

昨日5月16日、演出家・蜷川幸雄さん(享年80)の告別式が東京・青山葬儀所で営まれました。
役者さんをはじめ、数多くの著名な方々が参列されていましたね。
そのニュースの中でちょっと個人的に気になったのが「戒名はない」という一文。
戒名なしってどういうこと?」と思う方もいるかもしれません。

Amazonによるお坊さん便「戒名授与手配チケット」などが物議をかもしたりはしていますが、どんな方法にせよ仏教家庭の場合、戒名(浄土真宗の場合は「法名」)を授かるというスタイルがまだまだ一般的です。

蜷川さんが仏教徒だったのかはわかりませんが、菩提寺のある人が戒名をつけたくないと希望する場合には、いくつかの注意が必要なのでご紹介したいと思います。

菩提寺が葬儀を拒否?

そもそも戒名とは、仏教徒として誓いを守りますよ、という証としていただくもの。
つまり、「戒名はいらないです」ということは、「私は仏教徒ではありません」といっているようなものなのです。

ましてや菩提寺があるということは「そのお寺の教えを守りますよ」という熱心さの表れでもありますから、「戒名不要」と言われると、お寺側からしてみたら良い気持ちはしませんよね。

そして、ことは戒名だけにとどまりません。
戒名以前に「じゃあ、葬儀はどうする?」という話になります。
「仏教徒じゃないんだったら読経も不要だよね」
というのが菩提寺側の理論。ごもっともといえばごもっともです。
となると、たとえば葬儀会社から紹介を受けるなどした菩提寺以外の見ず知らずのお坊さんに読経をあげていただくか、あるいはいっそのこと「自由葬」と呼ばれる宗教色のない葬儀を行うというのも1つの選択肢です。

ただその場合は「なぜ菩提寺の僧侶じゃないの?」という親戚関係からの質問攻めがあるのは必至。
故人の遺志なのか、喪主としての考えなのか、きちんとこたえられるよう準備しておくと良さそうです。

納骨を拒否される?

菩提寺に先祖代々の墓があったとしても、戒名がなければ納骨を拒否されることもあります。
納骨を拒否されれば、宗教を問わない公営の墓地か民間霊園などに申し込み、新たに墓地を立てる必要が生じます。

また、たとえば「自分で好きな戒名をつけた」という場合も同様なことが起こり得ます。
戒名には、その宗旨宗派にそった形というものがあります。百歩譲って「自分でつける」という行為は認められても、宗旨宗派のルールにそぐわない戒名の場合はやはり納骨できない可能性が高いといえます。

先祖の法要もできない?

戒名はつけず、葬儀は別のお寺の僧侶に頼み、お墓も別の場所に用意したとなれば、結果的に菩提寺との関係性の悪化は否めません。
そうなると、檀家でありながら先祖代々の法要を菩提寺で行うことも難しくなってくるでしょう。

まとめ

宗教観念やお寺とのつながりが希薄になっている今、戒名に関しての意識も変わりつつあります。
「戒名はいらない」「生前の名前がいい」色々な考えがあるでしょう。
でも、万が一の際に急に「戒名はいらないです!」と一方的に断言することは、菩提寺・檀家の双方にとって必ずしも得策ではありません。
菩提寺によっては、こちらの意見を踏まえたうえでの戒名をつけてくれる場合もあるようです。
自分や故人の考えを尊重したいのであれば、まずは菩提寺と相談してみることをおすすめします。